アテンション過負荷(Kafka)/革命前夜🗽

お揃いのタトゥー / Osoroi no Tattoo

大林 寛 / Hiroshi Obayashi

2022.09.08

“どんなグループ(ラディカルなものや虐げられたものでも)に入るのにも自己の一部には目をつぶらなければならないが、それは少なくとも、そのグループが立証してくれるのと同じくらい、重要なものなのだ”
パトリック・カリフィア『セックス・チェンジズ』※1

フィアットエコノミー最後の夏💸

通りすぎてく夏 a.k.a. デンジャーシーズンのDOOM。そいつはメタルフェイス。いや、MOOD。寝ても待ってもやって来ない果報。うだつの上がらないフィアットエコノミーをよそに、今日も男を削っていく。生死を問わず請求し続けるサブスクリプション。SNSを断つために指を断つ。MAKE INSTAGRAM INSTAGRAM AGAIN.

心電図と新生児室のsynthesis。心霊スポットでパウル・ヒンデミット聴きながら心停止。グレーゾーンのレゾンデートルを冷蔵。過酷な幽霊。気狂いじみた連中。光の進路が変わる。永続する映像。没入するためだけの視覚。映画的な快楽。遠近感のない夢。自動的に切り取られる世界のノイズすべて。わたしの前にそれだけがあり続ける。

内臓があることへの違和感と内臓がないことへの違和感が対消滅して、わたしはわたしの器官なき御神体。大きな、あるいは、小さな。粘菌が思考する。暴動するガール、スピットするボーイ。快楽原則のパラシュートで死ぬまでclubbin’してるのにもうずっとcravin’. 彼女はあなたをstimulateした?それともsimulateした?

尼崎ダークウェブ。神様だけがフォーエバーヤング。その人のスタイリングが好きということこそが恋なのだから。でもティモシー・シャラメはマダムキラーだから。関係を手触りで確かめる。熱いものの痕跡。誰にもわかられたくない。何も見えない静かで透明な夜。ノンファンジブルな気持ちでずっと後を付けてる。想像上の彼とわたしの境界線が消える。送らなきゃよかったメッセージ。

ここは試着して鏡を見ても、数字でサイズを知りたくなるような世界。ラディカルなECのスタイルズ。「わたしたち間違ってないよね?」振り返った友達が不安そうな顔で言ってる。マンブルコアでもマントル突き抜けコアまで届いて、ブラジルの人聴こえますかー?

植物、代名詞、鏡、時間🪷

抑鬱。世界と融け合う植物。ホールフーズのエコバッグの中の存在論。物理身体を土着の分子的ネットワークに埋める。わたしはわたしを周縁化する。わたしがわたしの突端であるように。あなたはスーパーマーケット。「ここを抜け出して二値化しようよ」って耳元で囁いて、喰い合うバウンスで失神する。Let’s get digital.

世界をガラス面に横たえてXeroxして置き去りにする。非網膜的な純粋視覚平面に叩きつけられる。解釈による自己投影の向こう側にあるすべてのものに、生きてることを詰められてる。廃墟の「墟」が「嘘」に見えてクソ潜れなかった朝に、生きてきた全部の瞬間が整然と並んで見える。細部への執着が重畳的に細分化されフラクタルにズームインし続ける最中のホワイトアウトだけがカタルシスだよなあ。

ブライアン※2みたいにriot queer. grrrlみたいにqueerrr / qqqueer / queeeeer. 綴りを変えると混じり合ったspellがmagic spellに変わる。わたしを指し示す代名詞を探す。she/her, he/him, they/them, eeasfggaww2.aasfq-e\\^–e..fas.a.s___/sfl;calsfag.safaa. 不可算名詞で負荷分散しても、わたしのアテンションは過負荷(Kafka)。ふかふかのベッドで眠る夢を見ている。夢の中で夢にまで見た夢。ワイヤードから抜け出しても合わせ鏡みたいにレイヤード。あなたのブラウズを映し返す。

親指を使って生地-表皮の上に均質空間を刻みつける。タトゥーを入れて傷をつけて、どこまでも続く身体平面が立ち現れる。表皮に配置されたオブジェクトが均質空間を浮き上がらせる。スケールフリーな身体の拡張のために、わたしだけのグリッドがわたしの拠り所になる。全身を隈なく覆う非-静止都市※3。格子に包まれたわたしの身体(死体)は艶めくクロームの外骨格。

Hey, Joe. 買ったばかりのボトムスをモンペと揶揄した男をさっき殺した。作り笑いとヒソヒソ話が花と水になる風の時代。マルチプルオーガズムなき人生訓には余剰がない。代入すべきは時間。人間以外のすべての時間の愛おしさ。トラルファマドール星での優雅な幽閉。惑星ソラリスのエルミタージュ幻想。態度が形になるとき。もう取り残されることを恐れていない。自助≒自叙の迷宮でチルなんてできやしない。

法廷のマルセル・デュシャン👩‍⚖️

気づけばキッズのBADモードで剥がすキズパワーパッド™。血便のモルモットとシケ込む節電中のパロアルト。喫煙の場所もっと。わたしのわたしによるわたしのためのカーゴカルト。「死んでみる?」と言いつつ生きてる感覚がゴーカート。その地下道壁面に反射するパトランプと水槽のサーモスタットをランドサットの目で見るウパニシャッド。ロードサイドのガスステーションで給油するキム・カーダシアン。

「あなたには黙秘権がある。あなたの供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる場合がある。あなたは弁護士(マルセル・デュシャン)の立会いを求める権利がある。もし自分で弁護士(マルセル・デュシャン)に依頼する経済力がなければ、質問に先立って公選弁護人(マルセル・デュシャン)を付けてもらう権利がある」。

コモンローなしのコーンロウ。プルオーバーなしのスリープオーバー。建築家なしの建築。自由なしの自由落下。窓の外の天使と目が合う。全部見えてるのになにひとつ手出しできない者の顔をしている。性懲りもなく溶け出している本当のことを、その透明なものの中心に。水には匂いがある。ねえ、今すぐ純白模造であらゆるオブジェクトを包んで飲み下して。

この会話はサステナブル。みんなが寝ても終わらない。わたしはしゃべり過ぎだと誰かが言う。わたしはずっと黙っていると誰かが言う。全世界が自己開示を強要する。ひとりで死ぬときの会話を推測(dialogues / die-alone-guess)している。朝に鏡を覗き込んでも、必要なものすべてが認められない。あらゆる違和感に同一化していく。dysphoria forever😇😇😇

小説はもう読めない。わたしではないから。映画はもう見ない。わたしではないから。音楽はもう聴かない。わたしではないから。誰でもないのではなく、私であるのだ。圧倒的に、絶対的に。細胞が入れ替わっても記憶が残るなら、わたしは記憶。手を出すな。それはわたしだけのもの。それ(gray matter)な。

バイカーたちのアンセム🏍

Ruff Ryders’ Anthem. メイカーズからバイカーズへ。2ケツするオーバーサイズ・フォーエバー。still Y2K 2022。2という数字を並べて閉じるファスナーもY2K。パリス・ヒルトンのtacky-chicスタイルをリコールしながら、2つに分かれていく。現実の速度を限りなく0に。Why you care? Rage against Rage?

下腹部をえぐるエンジン音。国道をどこまでも南下する。光沢のある金属の輪が連なる。乾いたチェーンの音が水滴のように感じられる。アスファルトをこする金属バットは神社で鈴を鳴らすみたいな音がする。すべての中毒者に永遠を。すべての中央分離帯に花束を。そのすべてに光り輝く都市が、小さく、映り込んでいる。

退化していく。ずっとドラッグなしでエゴ・デスしてる。あらゆる視点を脱主体化する。「内的感覚をストレートに表現せよ」と命じる者を言語で拒否する。わたしというダクトの中で震えるかわいそうなジョン・マクレーン。誕生の瞬間からあらゆる存在に蹂躙されて猪木アリ状態。生きづらさとわかりあえなさが高山フライ状態。ルールは物理法則のみ。

片耳だけ、いつも、陶片のように白い首筋に耳から垂れた血がラインを引く。巻貝の奥底に海が聴取され、蝸牛がいななく。教科書で見た脳の写真。幽霊の果実。他者なき暴力。Who Shot Ya? 誰があなたを撃った?バンバン、あの悲しい音。シナトラみたいにmob ties. モブだと思った?あなたのベイビーがあなたを撃った。

“But I swear it was in self-defense.”
He said “kill it before it grow.”
He said “kill them before they grow.”

オーケー、リロードした。95だ、マザーファッカー。GorgeはGorgeだ。フロントローはフリークショーだ。京都から東京に向かうアレン・ギンズバーグよりも速く通り過ぎる雷雨。弾丸列車とすれ違う。スマートフォンからワイヤーを伝ってきたDa Bratが言う。That’s what I’m looking for.

再動物化/再セカイ化するポストモーダル/歯列🦷

海の見えない駅前でエナジードリンクを飲む。おどおどしながら電車に乗る。適切な行動は不可解(FU-Kakai)。明文化されたルールに従うだけでは不十分。隠された行動規範は明言されない。異なる行動規範に基づいてアクトする無数のトライブがひしめき合う。電車ではパーソナルスペースが狂った連中と呪詛を吐き続ける人が拮抗したムード。

わたしたちは自分の身体が在ることの意味を甘く見ていた。わたしたちに電車は早すぎた。わたしたちに街は早すぎた。わたしたちに歩行は早すぎた。わたしたちに肉体は早すぎた。わたしたちに存在は早すぎた。ウイルスが情報ではなく、情報がウイルスだった。

パンデミックが変えたエロスの意味。非接触でラストオージー。視線よりもWi-Fiみたいに、意識のバックグラウンドで行き交う不快と憎悪の交感。身体を叩き潰して関節を全部外して、イメージの上でわたしを分子化する。目を閉じて音量を最大にすると、わたしの加害性が増大する。そして目の前に空席が現れる。

7分割されたシートがあって、

Seat01

このようにひとつ置きに座れば成員が等間隔で並ぶことができるが、

Seat02

このように真ん中に座る者は憎悪される。

埋まっていく座席の小さな隙間に入り込むのは必ずニキあるいはネキであり、無徴者でありながら体積をコントロールせず、境界を侵犯し続ける。車椅子とベビーカーと有徴化されたすべてのもので車両を満たそう。彼ら/彼女ら、均一な無徴者らの居場所のすべてを塗り潰そう。よく動く指先と肩の間で遊動する肘がわたしの可動域を制限する。実際の接触ではなく、動作の可能性を侵犯することが罪悪になる。

感情はもういい。さよならエモーショナルという空気感が漂っている非エモの極北。感情がないということは決断をしないということ。現実を倍速視聴しながら違うこと考えるポストモーダル。そんな渦中のエモーショナル・リバイバル(再動物化)。でもつらすぎておじやしか食べられない(再セカイ化)。

空気と塩水とわたし🤱

メールボックスの底からセイ・ハロー。チャイニーズ・ヒップホップとデューク・エリントンのシノワズリが交錯する。蝉の鳴かない真夏日の気温計のように、細くて透明な管の中を赤い液体が、喉を這い上がってくる。嘔吐によって内側が外側になり、外側が内側になる。でも表面がずれただけで、中にあるものは依然として中にある。nuh sayin’?

風もないのにかき氷の旗が揺れている。リアルタイムレンダリングされる氷菓の透過光が、あなたを非文化まで余さず盗用する。軒先の簾の陰影は嘘のよう。あるシーンを起点に世界がすっかり切り分けられてしまう。アテンションがオーバーロードした果てに、全人類が同時にエクスタシーに達する予感。He says “大抵松戸にいる”.

Stitches get snitches. 徴のあるものを見つけたらオフライン/オンラインでdoin’ it. doin’ it. doin’ it. でも「カスりカスりなら平気」な多層構造。際限なく増殖しては自律的にテロルをミントし続ける。ハッシュタグ・アクティヴィズムから純粋視覚による動員へ。記号から灰色の表層へ。視覚中心主義者たちの群れがスコールの中で霧消する。でも大丈夫。どこにいたって見つけられる。We gonna make it all! というより、Brother gonna work it out!

夜半、放置された外壁。窓から見える部屋。四辺を埋め尽くす遺影が空間を上下に分割する。さっきの徴を搔きむしる。リアルは表層に凝集する。綿布を燃やす匂い。キラキラしてるものだけが正しい。蟻の戸渡りを這うクリプト。歩行者の天国。街をハックするより発掘する。

革命前夜。乗れるゲームがひとつもなく、わたしのためのことばはどこにもない。理解可能な世界で神経が萎縮していく。だから複数のチャットツールで地獄を共同編集する。外骨格の表面の微細突起。構造色の皮膚。空気と塩水とわたし。それを疑-太陽が毒する。何をするでもない。何を見るでもない。No time to die. Born to 無為.

    1. ※1パトリック・カリフィア『セックス・チェンジズ』(2005)

    2. ※2Brian is Ze “Riot Queer EP” (2020)

    3. ※3Archizoom Associati “No Stop City” (1969)