黒マスク原理主義者のミッドナイトゴスペル🌏

お揃いのタトゥー / Osoroi no Tattoo

大林 寛 / Hiroshi Obayashi

2020.09.03

いつ狂っていたのか、いつ狂っていなかったのか?何日のあいだ錯乱していたのか、何日のあいだそうではなかったのか?何日病気だったのか、何日そうではなかったのか?どれが真実だったのか、どれが誤りだったのか?真実だったのは何か?偽りだったのは何か?私の人生の記憶のなかで、どれとどれが偽りで、捨ててしまうべきもので、どれとどれが真実で、しまいつづけておくべきものなのか?
エドゥアール・デュジャルダン「過ぎ去った狂気」※1

不要不急のレイヴでラン・ザ・ジュエルズ💰

TOKYO2020、応答せよ。ウチら感染都市の乗組員。エアコンの風に吹かれて夢想してる。ここが自宅なのか宇宙船なのか職場なのか独房なのかわからない。新型ウイルスは旧型インフルエンサー。現実は早い。これはクールさを競い合うゲーム。パンデミックの人狼ゲーム。あつまれヘイターの森。

いや、どこまで加速しても、現実は遅すぎるのかもしれない。長い目で見れば。と言っても、それほど長くはない時間。コーヒーが冷めるまでの時間。夢から覚めるまでの時間。夜更けから夜明けまでの時間。エモーショナルをキャンセルして記憶のストリームを止める。すべてがムダだとわかるまで、すべてがムダじゃないふりをする。隠し口座よ、もっと潤え。

COVIDから遠く離れて、息を吸ったり吐いたりする。人混みなんて最初から大嫌いだった。でも人がいないのもつまらない。オーバーシュートしそうな心配をロックダウンして、今日も不要不急のレイヴに向かう。スマホ見ない勇気あるヤツだけ煽り運転で付いて来い。ハーネスをブラウジングして出かける。マイウェイはハイウェイ。人に会えばエロティックになれる。要は突き抜けるあの感じ。浮気なヒッピーガールに会いに行く。

歌って踊ることだけが生きる理由という事実を隠蔽する文科省。カンパニーフロウの「ブレードランナー」のようにヴィジョンをハックして、デフジャックスを通り越してラン・ザ・ジュエるしかない。怪盗ルビイはハート泥棒。乃木坂の「ザナドゥ」ってマンションに住んでる。できればこのまま、たとえばフォーエバー。

シードからウィードに魂のステージをアゲてく🚬

秒針を戻せば、ウチらはみんな2020年に死んでいたのだろう。あらゆるものが停滞し、なにもかも退屈で仕方がなかった。女の子に犬の名前をつけては、幽霊たちがざわめいていたあの夜。新しくできたショッピングモールに棲む真夏のストレンジャー・シングス。針とインクで全身に、彫刻刀で机に。彫る主体と彫られる主体。ホルスタインとパラレルな不在。お揃いのタトゥー入れよう like カーラとカイア。#ahegao上手い子、この指とーまれ!

本日あの世でワーケーション。ソーシャルメディアからはソーシャルディスタンシング。ときどきテキストするだけのカリスマ偏執狂。ゲリラガールズのマスク被った女子と美術館デート。バンクシーよりもバンクラプシーがずっとリアル。マスクレスの口元に、ブランドロゴのタトゥーを入れる。拡散希望つーか感染希望。ただトイレで自由にお弁当食べたいだけ。とにかく匂いがないのが嫌。いい匂いがすれば全部OKになるから。もっと自愛してたい。

イケイケのベンチャーがシードからウィードに魂のステージをアゲてく。抽象表現する中小企業への誹謗中傷。来るはずのない未来を想像してたら、現実の解像度が上がってただけのクラウドパンク。あきれるほどやることない。リモートネイティブは手触りを知らない。大事なことを後回しにするクセなおしたい。何歳になっても子供たちが死なないジュブナイル映画を観てたかった。

移ろう街のジェントリフィケーション。もうここでネットミームは生まれない。アーバンな盂蘭盆。毒がなきゃヴァジャイナ濡れない。ウェルビーイングはサイケデリックなメンタルケアに行き着いた。光の速度でREJUVENATEする男塾(メンズサロン)。目に見えんMANY MENが目指すスパニッシュ・メイン。厚切りオードリー・タンの爪の垢を巻いて吸って吐く。巻かれては浮上、登る煙と思惑。

ウチらの夜の街(インナーシティ)の浄化作戦(膣内洗浄)。オーガニック肥料としての糞尿を再生して作られた食料を食べて、産業廃棄物だけでリメイクされた服を着る。廃棄前提 ON THE RUN. シケモクくわえて IN THE SUN. ネットで見た景色を確認しにDOWN TOWNへくりだそう。

STAY HOMEつーかSTAY HOODで蜜ってる🏕

誰もが誰かの日記を読みたがる。「或るコロナ脳者の手記」というフェイク文書は、最初からグリッチノイズまみれのコピーのコピーである写本のスキャンだった。身分証明書のコピーを用紙に糊付けするときには、裏面に名前を書いておく。剥がれても誰のものかわかるように。自分が誰なのかわかるように。集合体としての自己しか持ちえないかもしれないのに。

フェイクとは偽物があるのではなく、真実がいくつもあることであり、すべては選択に委ねられている。マスクをするのかしないのか。どちらが表で裏なのか。不織布かガーゼか。右耳から引っ掛けるか左耳から引っ掛けるか。マスクの紐にイヤホンのコードは通すか通さないか。真実をひとつしか選ぶことができないのであれば、すべては信仰の問題になる。

誰にも信仰を区別できないから、不可避的に信仰のキメラになる。自意識のレベルでは黒マスク原理主義者で、行動においてはマスクレス派のCOVID-19不可知論者。量子レベルでのシンクレティズムが進みながらも、ピュアな単一信仰を自認している。

信仰によって生活様式が変わってく。新しい生活様式。古い生活様式。きれいな生活様式。おいしい生活様式。ていねいな生活様式。ヒップな生活様式。ジェットセットな生活様式。獣のような生活様式。嘘みたいな生活様式。生きてるのか死んでるのかわからない生活様式。最高の復讐である優雅な生活様式。生活には様式しかないから様式の無い生活をしたっていい。それはポストコロニズムの生活様式。

ウチらは他者からウチらを同定するしかないが、他者の信仰のうちのどのレセプターが機能するかは不明確なので、ウチらは可能な限り多くの他者と接触して、ウチらのほんとのトゥルーリアルな形を定めていく。STAY HOMEからSTAY HOODでEVERYBODY IN DA HOUSE. ウチらのフッドはいつも密。密いのがいい。密いのがいいよ。だってギュッてするでしょ。密ってる?密ってぬなら、密ってく?

治療薬のない夏から抜け出すためのコロナパーティー😷

コロナパーティー・トゥ・コロナパーティー。ティピカルな悪としての濃厚接触。それはNO COST接触だったり、NORTH COAST BAD接触だったり。接触不良より濃厚接触の方が悪いかな?希薄なのはどうなの?どっちがクール?90年代初期のウェアハウスパーティーみたいに、ネットでパスワードを入手して、サウンドシステムが持ち込まれた廃墟に向かう。モーフィアスみたいにフロアを焚きつける。山手線クラスター爆弾がゴジラに突っ込むみたいに。

ベイビー、それでもリアルなのは電車の中で吐いてるやつなんだ。それでもやっぱり希薄なんだ。夏へのフォビアで呼吸もできない。希死念慮を燃料に粘土のような呪詛を垂れ流して岸辺までたどり着いた。メディア関係者に向けた自殺対策の手引きを読みながら、治療薬のない夏から抜け出す方法を吟味している。ちゃんと夏に抱きしめられたい。マスクをして対面しない姿勢で。

Zoom保守派の連中は、上座と下座や入退室ルールを決めたがる。でもここは部屋じゃない。マナーはテンポラリーな関係を確かなものにする道具立て。マナーで序列を展開してディスプレイを解釈し、その場での身体のありようを決定する。ディスプレイと身体を結びつけることで、それぞれの行動を規定する。これはディスプレイという空間における権力発動の手段であり、人為的に空間を構成する建築が誕生の瞬間より維持し続けているプリミティブな機能だろう。そういう言ってる間に「ミーティングは終了しました」。

They wanna Zoom Zoom Zoom. まるでドレーとクールJ。ほんの一瞬ハッピーな気分になるためのZoom飲み。あの子は録画OK。リングライトと修正機能でZoom盛りして、Zoom勝ち組の彼と101回目のZoom。遠隔でチャHして存在を見つめてる。でもラグって一緒にイケない。オンラインマナーをアップデートすることで安定して存在する。ねえ、オンラインマナーつくろう。ウチらだけのマナー。LOVE OVER RULES.

気圧低いと調子悪いし欲しいものもわからない⛅️

ハマってる晩夏、抜け出せない。サマーチューンは永遠。サマーチューンだけが永遠。ずっと言ってるね、これ。何も言わないでいるために、恐ろしいくらい言葉を費やしている。主語よりも速く、自己が大きくなる。すべてがそうなってしまうか、すべてがそうでないかのどちらか。カテゴライズするとすぐ内面化される。これだけは言える。菅田将暉が好きな女は気圧低いと調子悪い。

ノンバイナリーでジェンダーフルイドだけど、インターセクショナルなXジェンダーは、ある意味で中動態だし相互包摂。割り切れない問題は割り切らずに置いておきたい。「二項対立を超えていきましょう」派と「二項対立かそうじゃないかという図式が二項対立だ」派が、互いに「あなたとは議論にならない」と飛沫を飛ばし合う。女帝とステップを踏む東京の完全勃起(マウンティング)。

キャットファイトがはじまりそうな街のムードは悪くない。価値が暴落した女の特権を、精神年齢7歳ぐらいのかわいい男の子が無邪気に奪っていく。オスに必要なメスの成分を大量に自家精製して自己精算しながら自家中毒になってる。それって男性の女性性だし、女性性の男性性性とも言える。そんな夜も港区女子は青山墓地で運動会。ねえねえ、さっさと潮吹けば?

生権力や規律権力を超えて、鳳凰ビヨンセの独裁的な主権権力を希求する人民。自分が思ってるような自分として見てほしい欲求に駆られて、今日もずっとテキスティングする。自分はツイートばっかりしてるのに、ツイートばっかりしてる他人が嫌いな理由教えて。本当に欲しいものなのか、欲しいと思ってるだけなのか、欲しいと思わされてるのかわかんない。思うようにいかない現実に、破れかぶれの虚構を重ねる。そうやって実装されてる自意識。

トーストのバターみたいに薄く延ばした夏の夜🍞

We’re so 2020. もう誰もSNSにテキストをドロップする意味がわかってない。とっくに終わってる8月の終わりに向けて、失われた夏が弧を描く。フラクタルな季節の中で水分を放出する新規感染者数グラフ。「もうあのお店に行けないね」とか言ってる間に、夏終わるね。実家帰った?フェス行った?海見た?夏はきみのことを待ってたんだ。部屋でMac Millerのラストアルバム聴いたりしながらさ。

JR新宿駅で降りると、向かいのホームの向こうに海が見える。南口からは水平線しか見えない。そして歩道橋から飛び込めば、橋脚にまとわりつくやわらかい水面がゆっくりと近づいてくる。珊瑚の形状をモデルに身体が再形成される。波打つコンクリートに張り巡らされた修悦体が水中を漂う。鼻腔から吹き出した大きな泡が太陽を分割する。波の表面に海棲哺乳類のぬるぬるとしたシェイプが透けて見える。

フラッシュフォワードする死。半径5メートルの死体置き場に過ぎ去った会話がどこまでも蓄積されている。拡張する身体から偏在する存在へのデジタルトランスフォーメーション。部屋に転がしたままの自作のジェムリンガ。エモーショナルの奴隷。ヒューマンよりもヒューマン。かわいそうに思ってメッセすると、勘違いしてファム・ファタられちゃう。

ようこそ、ポスト・ポスト・ポストヒューマンの時代へ。ヘロー、ヘロー、ヘローアゲインからアローンアゲイン。もし電車でこのテキストを読んでるなら、すぐに降りたことのない駅で降りて、そのホームから見えるもの全部を記録して。それがあなたにとって意味を持つ最後のテキストになるから。知りたいのは、今日の肌感。

ベイビー、本当の人生はジェリービーンズの中にしかない。胡桃の中の宇宙。頭の中のポークビッツ。バターコーン味の通過儀礼。棺桶みたいなレーズンサンド。トーストのバターみたいに夏の夜は薄く延びる。ここは2020年TOKYO。感染都市のミッドナイトゴスペル。スペースキャスターたちよ、帰還せよ。インサイダーで密くなろう。